国語を忘れた民族は滅びる 藤原正彦(お茶の水女子大学名誉教授)

 数学者として知られる藤原正彦氏は長年、日本の国語教育のあり方に警鐘を鳴らし続けている。読書力の低下で、文学や詩歌など美しい国語に触れない日本人が増え、同時に人間としての大切な情緒が失われつつある現状もその一つである。
 そうなった背景は何なのか、失われた日本語をこれからどのように取り戻していけばいいのか。大局的な視点から藤原氏にお話しいただいた。

小学校の国語において、比重は読みが二十、書くが五、話すと聞くはそれぞれ一です

藤原正彦
お茶の水女子大学名誉教授

 小学校の国語において、比重は読みが二十、書くが五、話すと聞くはそれぞれ一です。初等教育の目的は、子供たちが自ら本に手を伸ばすように育てること、それだけです。

 子供たちが弱い者いじめなど卑怯(ひきょう)なことをやったら、いくら人権や平等などと言ったところで全く埒が明かない。「ならぬことはならぬ」とビシッと叩き込むしかないのです。

 これは理屈ではありません。幼児期から多くの優れた詩や小説に触れることによって、そういう人として持つべき卑怯を憎む心や惻隠(そくいん)の情などの情緒が培われるのです。

プロフィール

藤原正彦

ふじわら・まさひこ――昭和18年旧満州新京生れ。東京大学理学部数学科大学院修士課程修了。理学博士。コロラド大学助教授等を経てお茶の水女子大学教授。現在名誉教授。53年、数学者の視点から眺めた清新な留学記『若き数学者のアメリカ』(新潮文庫)で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。著書に『国家の品格』『国家と教養』(共に新潮新書)『日本人の誇り』『名著講義』(共に文春新書)など多数。


編集後記

国語教育の重要性について、ベストセラー『国家の品格』の著者として有名な藤原正彦さんに伺いました。藤原さんに弊誌に最初にご登場いただいたのは2003年、国語教育に対する主張は当時から一貫しています。時折ユーモアを交えながらの本質を突いた発言が胸に迫ってきます。

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